『躍動の泉』平成18年12月号 座談会 テーマ「家族の絆」を考える
メンバー
村上道昭(56歳、二男一女の父)
清水みどり(46歳、一男三女の母)
池中揚子(43歳、三男二女の母)
司会:和田幸晴(45歳、三女の父)
リード文
今日現在、家族の絆が薄れてきているように思います。そのなかでいろんな悲惨な事件、痛ましい事件が、身近なところでも起こっています。そういう世の中を見て、多くの方が不安な気持ちを抱いているのではないでしょうか。そこでわたしたちお道の者として、この世相をどう見るか、いかにして陽気ぐらしに近づけていけるのかを考えてみたいと思います。
司会 まずはじめに、幸せな家庭とはどんな家庭でしょうか。そして今なぜ多くの家庭で治まりをみないのか。家庭というのは子供にとってどういうものなのかを考えてみたいと思います。
池中 家庭というのは子供にとって安心していられる場所であるべきだと思います。私が子供のころは家に帰ってきたらすごくほっとしたんです。だから自分の子供が学校など外から帰ってきたら、ほっとする、安心できる場所であるように心がけています。
清水 それぞれの家庭でいろいろ事情があるから一概には言えないと思いますが、私はやっぱり両親が揃っているということが子供にとっていちばん幸せだと思います。
私は子供のころによく教会に行ってたんですが、何人かの住み込みの方がいて、お父さんがいない人がいたんです。ある人に「あんたは幸せよ。お父さんがいるんだから」と言われたことがあって、そのときは分からなかったのですが、あとになって本当にそうだなと思いました。
親の愛情というのは底知れないものがあるじゃないですか。いつも子供のことを思っているんですよね。その愛情というのは本当の親子じゃないとなかなか子供にも伝わらないと思うのです。
私が子供のときも両親とも働いているから、あまりかまってくれないんです。でも愛情というのはどっかに自分の中にあったんですね。
司会 最近では奈良の田原本で起きた放火殺人事件が記憶に新しいかと思うのですが、家庭内の殺人事件が最近よく起こっています。なぜ子供は親を殺すのでしょうか。どうすればそれを未然に防げるのでしょうか。またどこにその問題があると考えますか。
村上 子供が親を殺す原因は根が深く、特定するのは難しいですが、背景として最近の子供は自然と接する機会が少なく、ゲームの世界と現実との区別がつかず、命の重みが感じられないことがあるように思います。
また、教育の問題もあると思います。昭和40年以降「道徳」にかわって「にんげん」、「人権」が教えられるようになりました。責任をともなわない自由、義務を忘れた権利のみが主張され、子供を甘やかす家庭が増えてきたことも、このような事件の背景としてあるように想います。
奈良の田原本町で放火殺人を犯した高校一年生は、事件後「もう一度人生をやりなおしたかった」といって自分の犯した事の重大性を感じていません。親の高学歴イコール幸せな人生という価値観を一方的に押し付けられ、ストレスがたまり、とりかえしのつかない事件を起こしたわけですが、なぜ放火殺人なのか、家出とか他の方法もあったのではないか、と考えますと理解に苦しみます。
親と子供のどちらが悪い、社会が悪いという次元では捉えることのできない問題だと思います。
教理的にいいますと、おさしづに、
……小人々々は十五才までは親の心通りの守護と聞かし、十五才以上は皆めん/\の心通りや。……
(明治21年8月30日)
また、
「小人の処、前生一人一人持ち越しという理がある。」
(明治22年1月11日)
とはっきりと前生持ち越しということを教えられています。殺人をするというのは根が深いと思うのです。
ただ単に環境だけではなく、信仰的に考えますと前生持越しとかまたいんねんとかそういう問題になってくる、だから同じような環境、同じような人間関係であっても殺人事件など起こらない場合と、殺人事件に発展する場合とがありますね。
だから殺人を犯す原因というものは、前生のいんねんとかそこまで掘り下げないと、殺人を犯した子供の動機とか、心理的な原因とか、また社会的な背景とか、そういう次元では解決できない、原因は分からないと思います。
昔と今の子を比べたときに信仰を抜きにしても、たとえば昔は手伝いをするのが当たり前でしたが、今は便利になって家事とか炊事の手伝いをするのが当たり前でなくなってきている、昔は手伝いは当然子供がしなければならないことだった。いわれなくても自然とできることだった。
今は子供が家庭でしなければならないことといえば勉強とかになっている。親も手伝いをしてくれるよりも勉強をしてほしいとおもっていますね。
社会の問題として考えると親子の間で価値観が違ってきている。昔は物の不自由なときは物質的に恵まれることが目標で経済力を付けるために学歴を身に付けた。高学歴→高収入→物質的に恵まれるイコールそれが幸せの方程式だった。
それが今の30歳以下の若い世代は生まれたときから物に恵まれていて、そういうようなことは目標でなくなってきている。親は物の豊かさを求めたが、今の子は心の豊かさを求めている。そこに親と子で求めている根本的な価値観にずれがあります。ストレスがたまって、そこに奈良の田原本の事件の背景みたいなものがある。今の子供は何が幸せなのか模索している状態に見えますね。
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